譲渡前のしつけについて

 お客様が仔犬のしつけも希望される場合は、お客様とご相談の上、可能な範囲内で仔犬のしつけ(訓練)を承ります。ただし、仔犬が1つのことをほぼ把握するまでに10日ほどかかりますので、訓練期間が短い場合にはご期待に添えない場合もございます。同時に日常の健康管理には十分配慮しながら、愛情を持って育てさせていただきます。

 仔犬のしつけ(訓練)で最も重要なことは、仔犬と飼い主との信頼関係を築くことです。昔の訓練士やサーカスの猛獣使いは、動物を脅しながら服従させてきました。しかし、そのような訓練方法では信頼関係は決して築けません。信頼関係を築くためには、飼い主が仔犬に体罰をしたり声を荒げて叱ったりして恐怖心を抱かせることは厳禁です。飼い主が仔犬とこまめに触れ合い、人の手は心地良いものだということを仔犬に認識させていくと同時に、仔犬が要求すること(給餌、散歩、遊びなど)は全て人が提供していると認識させていくことが重要です。そのためにフードは必ず手で直接、または食器を持ちながら仔犬に与えます。また給餌、散歩、遊びの時間はランダムにします。それは犬は体内時計が正確なので、いつも同じ時間に同じことをしていると、犬がそれを要求するようになるからです。時間をずらすことで仔犬は「いつ提供してもらえるんだろう」という期待感が高まり、よりしつけがしやすくなります。特に甲斐犬のように警戒心・独立心が強い犬種に関しては、幼犬のうちに様々な環境や多くの他人に馴らしながら育てていくことで、情緒豊かで落ち着いた犬に成長していきます。当犬舎が仔犬をお客様にお渡しするまでのしつけ(訓練)としては、主としてこのような基本的なことを踏まえた上で、可能な限りお客様のご要望に沿う形で進めさせていただきます。お客様のご家庭でのしつけは、お客様の家の事情に合わせて進める必要がありますので、それは実際にお客様が仔犬を迎え入れられてから進めるほうが実情に適ったものとなります。

 実際の訓練方法としては、仔犬のうちは雑菌や寄生虫により病気になるリスクも高いので、籠に入れた上で車に乗せて移動し、または抱いて移動しながら様々な環境や多くの他人に馴らしていきます。これはトイレのしつけなど室内でできる訓練と比べたら遥かに手間がかかりますし、更に病気にかからないように細心の注意を払う必要があります。もちろん、万が一病気にかかれば当犬舎で全て補償させていただきます。また多くの他人に馴らすと言っても誰でも良い訳ではなく、威圧的な感じの人に会わせると逆効果になりますので、基本的に仔犬を優しく可愛がってくれる人に限ります。このような訓練をしておくことで、後々お客様が仔犬を迎え入れられてからも手間がかからず、家庭内でのしつけが容易になります。もちろん、お客様が迎え入れられてからも、仔犬との信頼関係をしっかり築くとともに、基本的な訓練は続けられることをお勧めします。

 また移動するためには籠に入れる必要がありますし、室内においても仔犬から目を離したり留守番をさせる際には籠に入れておくことが基本です。仔犬のうちは何でも咬むので、咬まれて困るものを置かないことと、電気のコードは感電する恐れがあるので咬まないように気をつけなければなりません。当犬舎ではフードで導きながら「ハウス」などの号令をかけて籠に入れ、フードを与えながら「よしよし」、「そうそう」などの言葉で良く褒めます。狭い所に閉じ込めるのはかわいそうだと思われるかも知れませんが、犬の先祖であるオオカミは穴を掘って住処としていましたので、犬も狭い籠の中にいると安心してくつろぐことができます。これは野性味が強く先祖のオオカミに近い甲斐犬については特にあてはまります。市販されている籠のなかで、甲斐犬にはアイリスオーヤマのエアトラベルキャリー「ATC-670」、ラブラドール・リトリーバーには「ATC-870」、フレンチ・ブルドッグには「ATC-530」か「ATC-670」がお勧めです。

 仔犬のしつけ(訓練)が不十分だと、様々な問題を引き起こす可能性があります。過去に起きた問題例として、仔犬を初めて車に乗せて動物病院に連れていったところ、そこの獣医師が「飼い主は診察室には入れません」と言って仔犬だけ中に入れて予防接種をしました。仔犬にとっては「いきなり初めての場所で初めての他人に痛いことをされた」という思いでトラウマになり、しかも車に乗ってそこに行ったということで車に乗ることもトラウマになりました。このようなことを避けるためには、レントゲン撮影や麻酔をかけての手術など特殊な場合を除き、飼い主も診察室(治療室)に入れる動物病院を選ぶ必要があります。更に言えば診察の前に獣医師や看護師にフードを渡して仔犬に優しく声をかけながらあげてもらえる動物病院がベストです。当犬舎ではそのような動物病院を選んで、仔犬たちの予防接種や診察を受けています。また別の問題例として、仔犬を初めて車に乗せてドライブした時に、暗いトンネルに入ったことで恐怖心を抱き、それ以来その子はトンネルがトラウマになったということです。これも物心がつきはじめた幼犬のころから少しずつ様々な環境に馴らしていくことで避けることが可能です。大切なことは、いきなり大きな環境の変化でショックを与えないことです。例えばトンネルに入るにしても、初めは短いトンネルから徐々に長いトンネルに馴らしていきます。また仔犬が何かに怯えたときに、飼い主が同調して「どうしたの?大丈夫?」などと心配そうに声をかけたりするのではなく、飼い主は全く動じていないという姿勢を示すことが重要です。

 また、仔犬の社会化を正常に進めるためにはこの時期に母親や兄弟姉妹、また他の成犬たちと一緒に遊ばせることがとても重要です。生後50日くらいまでは母親や兄弟姉妹とともに過ごすことで犬の社会を学び、同時に人の社会に馴染むための極めて重要な時期です。この時期に適切な仔犬の育成をしなければ、将来的に他の犬との付き合いがうまくいかなかったり、人に対する接し方に問題が生じる可能性がなります。一例として、2017年3月、東京都八王子市で生後10ヶ月の乳児がゴールデン・リトリーバーに頭を咬まれて死亡しました。また2020年3月、富山県富山市で生後11ヶ月の乳児がグレート・デンに頭を咬まれて死亡しました。死亡に至らないまでも、似たような事故は頻発しています。この原因の一つには、この犬たちが生後50日頃までの間に正常な社会化が育まれていなかったと考えられます。結果として、生き物とおもちゃとの区別がつかなかったり、咬み加減が調節できなかったりすることがあります。ブリーダーの中には、生後30日ほどで母犬から引き離し、また仔犬の飼育ケージを1頭ずつ別々にする人も多く見受けられます。それは、母犬に次の繁殖をさせるために産後の肥立ちを早めたり、仔犬が一斉に感染症に罹るのを防ぐためです。しかし、それでは仔犬の社会化が正常に進みません。また、可愛い盛りである幼犬のほうが購買意欲をそそるため、実際の生年月日より繰り上げて販売するブリーダーもいます。当犬舎では、仔犬をお客様にお引き渡しする日まで母犬、兄弟姉妹犬、他の犬たちと一緒に過ごさせますし、生年月日を偽るようなことは一切いたしません。また、仔犬をいろいろな環境に遭遇させたり、多くの他人に会わせながら、情緒豊かに育成していきます。


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