*****世界自然遺産会議記念講演会*****

 西暦2000年5月18日(木)〜21日(日)屋久島および鹿児島市に於て世界自然遺産会議が開催されます。その記念に世界自然遺産を認定している
IUCN(国際自然保護連合)の保護地域部長ディビッド・シェパード氏および世界保護地域委員会東アジア地域副議長の菊地邦雄氏の講演会が開かれました。テーマは「国際的な目で世界自然遺産を考えてみよう」という内容でした。菊地氏は世界自然遺産の価値と重要性を訴え、シェパード氏はIUCNと世界自然遺産について説明し、世界各国の自然遺産地域の紹介と位置付けをスライドなどで詳しく解説しました。講演終了後の質問でのやりとりの一部を紹介します。

【質問者】木下大然
 シェパード氏はよくご存知だと思いますが、オーストラリアにはコアラ、カンガルーなどの固有の野生生物がたくさんいます。ところがアボリジニが連れてきたディンゴ、そしてそれ以上に白人の連れてきたウサギなどによって貴重な野生生物が絶滅したり非常に数が減ったりしました。屋久島でも人に飼われていたイヌ、ウサギ、ヤギなどが逃げて野性化しています。また最近ではタヌキも見掛けるようになりました。また道路を造る時の斜面には外来植物の種を吹き付けたり、並木にも島外の木を植えています。外来の植物だけで100種類を越えています。このままでは貴重な屋久島の自然が失われてしまう、つまり自然遺産の大きな目標である「持続可能な自然環境を保つ」ということにはならないのではないでしょうか?またこの様な人為的な移入種についてこれからどの様にしていくべきだと思いますか?もう一つ、持続が不可能になった時には自然遺産から外される可能性がありますか?

【解答者】シェパード氏(要約)
 外来種は世界各地の自然遺産地域に入っていてそれぞれ問題になっています。そこの自然環境を持続していくにはそれらの外来種を取り除くことが必要です。また自然環境を保つことが不可能になった時には「危機に瀕する世界遺産」のリストに載せられます。例えばアフリカのヴィルンガ国立公園は、紛争のためそのリストに載せられました。またアメリカのエヴァグレーズ国立公園は、周りに農地が増えてきたためにそのリストに載せられました。「危機に瀕する世界遺産」のリストに載った場合、特別の注意と緊急な措置をとり、出来るだけ早くそのリストから外されるように努力していくことが必要です。努力を怠れば世界遺産の登録を取り消されることもあり得るでしょう。

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