*******抗菌社会のおとし穴*******

屋久町総合センター大ホールにて(10月13日)
   
「抗菌社会のおとし穴」というテーマで、寄生虫博士で有名な藤田紘一郎先生の講演会が開かれました。この日は年に3回ある山の神祭りの日(旧暦1、5、9月の16日)にあたり、山で仕事をする人たちは仕事を休んで自然の恵みに感謝し、山の神様を供養する日とされています。私たちガイドもそれに因み、自然について語り合う日としました。
 先生は寄生虫の研究で知られ、「笑うカイチュウ」などの著書が有名です。屋久島では、自然との共生がうたわれていますが、私たちの内なる共生関係(体内に潜む回虫やバクテリアとの共生関係)はどうなのでしょうか。アトピーや花粉症の増加が寄生虫と関連があることをご存知でしたか?こんな話を先生はわかりやすく、おもしろくお話ししてくださいました。

 講演の中で先生は、私たち家族の話にふれ、我家の暮しぶりは抗菌社会とはかけ離れたもので、O-157の心配などまったくないと言われました。特に倭賢は裸のまま裸足で飛び回っていて、原始人のようだとほめられました
(^_^;

 今回先生は奥様とご一緒にいらして、私たちの新居に泊っていただきました。本当はもっとゆっくりしていただきたかったのですが、翌日は名古屋で大事な会議があるということで、早々にご出発なさいました。

私達の新居の前にて(10月14日)
右から私、藤田先生、奥様、忍、香里、倭賢

 

藤田紘一郎(ふじたこういちろう)

 1939年中国満州生れ。東京医科歯科大学医学部卒業、東京大学大学院終了。現在、東京医科歯科大学医学部教授。医学博士。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。「笑うカイチュウ」で1995年講談社出版文化賞・科学出版賞を受賞。「空飛ぶ寄生虫」「恋する寄生虫」(講談社)、「清潔はビョーキだ」(朝日新聞社)、「ヒトとイヌと寄生虫の愉快な関係」(成美堂出版)、「フシギな寄生虫」(日本実業出版社)、「バイキンが子どもを強くする」(婦人生活社)など著書多数。






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どの本も
清潔信仰への
警鐘となっていて
とても面白くて
ためになります。














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講演会を聞いた皆さんの感想文

屋久島のガイドの役割

 藤田先生の本は何冊か読みましたが、講演は本とはまた違う面白さがあり、大変有意義でした。先生をヤクスギランドにご案内した時に野鳥の会の方にもファンが多いんですよと仰っていました。また、先生が医者として最初に赴任したのがカリマンタン島で熱帯の大自然の中で現地の自然と密着した生活を体験された。その経験が今の考え方の基本と成られたようです。この二つの話しが非常に印象に残りました。自然と常に接しているナチュラリストなどには先生の話しはなぜかしっくり来るものが有る。私もはじめて先生の本を読んだ時、「そうだったのか」と目からうろこが落ちたようでした。しかし、無菌室で物質を抽出し、培養する西洋医学の世界では先生の理論は無視されがち。きっと自然から切り離された実験室ばかりで研究をしている学者には生態系とか自然の力とかが見えてこないのでしょう。先生は、そのような西洋医学に埋もれる前に大自然の力を経験された。やはり、人間も自然の一部であり、長い生命の歴史の中で生まれてきたものなのです。人間は、抽出され無菌室で培養されたものではなく、その他雑多な生き物と深く関わりながら生きているものなのです。そんな当たり前の話しが今は通用しなくなってきている。我々ガイドが屋久島で観光に来られた方々に屋久島の大自然の中でじっくりと自然に接していただき、先生がカリマンタン島で感じられたような自然の力や生態系と言うもの是非とも屋久島の自然を通じて伝えて行けたらと思います。それが屋久島のガイドの努めであるような気がします。今回の講演を聴いてさらに屋久島のガイドの役割を認識しました。藤田先生、お忙しい中、どうもありがとうございました。

屋久島ガイド連絡協議会会長 松本 毅

山の神祭り特別記念講演会『抗菌社会のおとし穴』について

 離島にまで抗菌製品があふれる時代となりました。若い娘(ひと)と接しているオジサン達がナゼ活々しているのか?常在菌が大きなウェイトを占めていたのですね。風呂や温泉に行っても強力洗浄剤でアカスリタオルでゴシゴシというのが当り前となり、以前より固形石鹸オンリー、泡が立っているのか否かわからないような洗い方でしたから、小さな子供から『おじさん、ビンボーなんだね、石鹸で頭洗ってるー』なんて言われてましたが、これで良いのだと大きな顔が出来ます。
 藤田先生のスマートなこと、キヨミちゃん一世の横でご満悦の写真(「獅子身中のサナダ虫」)とは比べようがありません。別人と思った位です。女房もいつの間にかすもうとりのような体格になり、キヨミちゃん(サナダ虫)が必要になりました。秋の東北地方、日本海裂頭条虫仕込みの旅に出なければと思っています。それ迄は抗菌グッズをなるべく使っていないような若者より、便座から「常在菌よありがとう」といただくのが当面家庭不和を起こさず、最善の方法と存じます。藤田先生と唯一の共通項、畑のすみのコエタンコに二度もはまり、誠に光栄と存じ筆をとりました。
 今日はインドネシア、カリマンタン島の若い女性のすべすべ肌に夢をはせ、床につきたいと思います。
 楽しい講演会をありがとうございました。 

尾之間 ペイタ 平田 寛

「抗菌社会の落とし穴」を拝聴して

 先生のお話は、大変わかりやすく、楽しく聴かせていただきました。
 常日頃シャンプーやリンス、合成石けん、洗剤を使う人達に対して自分だけ清潔にして川や海を平気で汚しているとかなり批判的な目で観ておりましたが、結局それが自分自身の免疫力をも低下させてしまっているのだなあという実感を戴き、もっと周囲の人間に“フケツ”になりなさいと言いたくなりました。まあフケツというよりは、回りの菌や皮膚常在菌と仲良くつきあうように、これから多くの人達に伝えていきたいと思います。
 それから、講演後、先生を囲んでの交流会等があったら、より先生のお話に対する理解が深まったのではないかと感じました。
 貴重なお話を伺って、お骨折りいただいたスタッフの皆様には深く感謝の念を禁じえません。
 本当にありがとうございました。
 藤田紘一郎先生にもくれぐれも宜しくお伝え下さい。またの来島を楽しみにしております。

麦生335 ペンション天然村 張 明妃

藤田先生の講演会についての感想

 藤田先生のお話はおもしろくて、楽しくて、既成の価値観とは全然違い、びっくりすることがいっぱいで、しかもとっても納得出来ました。
 自分でサナダムシを飼ってみよう……という所まではいきませんが、キタナイ、気持ち悪いという感情は自分勝手なことなのだなと思いました。
 都会では、洋式トイレにすわれないとか、潔ペキ性の若者が増えているということを聞き、私も少しはそういう所あったかもしれませんが、今は屋久島の自然の中で生活して、たくさんのいのちのぬくもりを感じているから、悪いと言われている菌や、気持ち悪いと思われている虫たちにも感謝して生きてゆければいいなと思います。
 これからも、山や自然を大切にしているガイドさん達の会で、自然、いのち、屋久島のことや地球のことを勉強出来るイベントや講演会をぜひやり続けて下さい。     

麦生335 ペンション天然村 山縣 由紀子

藤田先生の講演内容を又聞きした者の感想

 講演会に行った妻と友人から内容を聞き、会に行けなかったことが残念に思いました。話を聞くとどれもこれも全くその通りだと思うことばかりでした。実際にお話を聞きたかったです。
 人間と微生物の関係が植物と微生物、大地の関係と一緒だということも連想しました。普段風呂に入っても体を洗わないのでその点でも話の内容はうれしかったです。ただしサナダムシを飼う話だけは仰天しました。
 ところで、話を聞き初めに思いうかんだことは、保健所の先生方は来られていたのだろうか、ということです。保健所の先生方に一番聞いていただきたいお話だなと思いました。

麦生335 ペンション天然村 山縣 伸之

講演について一言

 東京に居た頃に始めて先生の著書を読んで、変な学者だな(失礼)と思っていて、屋久島にきて「獅子身中のサナダムシ」を読み、ますます面白い学者だと興味津々の時になんと!来島されると聞き、ぜひ講演をお聞きしたいと駆けつけました。呼んでいただいてありがとうございました。スタッフの皆様はさぞかし大変でしたでしょうね、ご苦労様でした。
 でも、講演のタイトルがチラシを見る限りではアトピーや花粉症などのアレルギーの講習会のようなイメージをもちました。そう思っていらした方も多かったのではないでしょうか。たしかに関連はありますが、先生のユニークで楽しいお話が聞けそうだとわかったのは著書を読んでいた方だけだったと思います。タイトルを工夫すれば、もっと沢山の人達を動員出来たと、少し残念です。でも、思ったより大勢集まりましたね。今回いらした方達はもう先生のファンになられた事でしょう。又、機会を作って来ていただいて楽しい講演を聞いて知識を得たいものだと思っております。きっと、満員になると思いますよ。あと、講演の時に少しの時間を質問とか会場との対話にさいてもよかったのでは?と思いました。
 以上が私の感じたところです。イベント関係の仕事もしていたのでどうしてもこんな感想になってしまいました。本当に木下さんはじめ皆様に感謝しております。これからの御活躍も期待しております。よろしく。

田中 ミエ

藤田先生にエール

 藤田先生の講演は期待通りおもしろいの一語に尽きます。コメディアンを自称されているだけあって、学者らしい(?)話しぶりでなく、明快でわかり易く腹の底から笑える話でした。しかしそのおもしろさは単に「ハハハ」と笑って済ましてしまうおかしさだけではなく、実験で寄生虫をすりつぶすことを繰り返し、アレルギーを抑える薬を精製する話などアカデミックな裏付けがちゃんとあるのですから並のおもしろさではありません。またこの薬がアレルギーは抑えるがガンにかかり易くなるということで、すぐに断念してしまったというイサギよさには心打たれました(こう言う場合大抵副作用には頬かむりして「○○に効く」ということで大もうけを企む輩が多い世の中ですから……)。
 ヒトに役立つ古典的な寄生虫と本当にアブナイ動物の寄生虫の話など私たちの生活にすぐ役立つ有益な話は目からウロコが落ちました。
 雲の上の難しい話より、このような生活に役立つ話をしてくれる学者が今の世の中には必要だと思います。藤田先生、今後も頑張ってください。

木下 忍

内なる共生の大切さを学ぶ

 私の母方の祖母はペニシリンショックで死んでおり、私自身もその体質が遺伝しています。私は東京杉並で暫く自然食品店をやっていたことがありますが、その時もアレルギー病のお客様が何人もいらっしゃいました。しかしアレルギー病についてはずっとナゾが解けず、まともに相談にのることすら出来ませんでした。藤田先生の「笑うカイチュウ」を初めて読んだ時、そのナゾがスーッと気持良く解けていきました。エコツアーガイドとなった今では、ガイド中に必ず藤田先生の本の内容を引用させていただいております。一人でも多くの人に清潔指向の誤りに気付いていただき、バイキンや寄生虫と共生しつつ、ヒトにも自然にも負担の掛からない生活を目指していってほしいからです。
 さて、講演会には116人もの参加者があり、藤田先生も感激していました。今回の講演会を企画させていただいた者の一人として、反省点を述べさせていただきます。まず何人かの方から「講演後先生を囲んでの交流会をやってほしかった」といったご意見を頂きました。今回は屋久島ガイド連絡協議会の会員に限り交流会に参加可能という形をとっておりましたが、残念ながら会員で集まったのは4人だけでした。初めから一般の人にも集まっていただけるように会場の設定をしておくべきでした。また会場でご意見やご感想を書いていただくよう、前以てアンケート用紙も用意しておくべきでした。会場の照明や空調についても不備なところがあり、藤田先生並びに参加者の皆様にはご迷惑お掛けしました。今回の反省点を生かして、次回はより良い企画をしていきたいと思います。皆様方のご助言をお寄せください。
 藤田先生には本当にお忙しいところご足労いただき、素晴しい講演をしていただいたことに深く感謝致します。今回はゆっくりと屋久島をご案内することも出来ませんでしたが、いつかまた是非屋久島に遊びにいらしてください。本当にありがとうございました。

屋久島ガイド連絡協議会理事 木下 大然

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