救助犬について

 昭和45年、日本ではじめての盲導犬訓練士が3人誕生した。その一人、坂井貞雄氏は、23歳の時東京盲導犬協会に訓練士見習いとして入り、7年間、警察犬や盲導犬などの訓練の手ほどきを受けて一本立ちした。その後、東京で5年間修業を続け、盲導犬の大切さを痛感、盲人に少しでも役に立てばと故郷の富山で訓練所開設に踏み切った。現在では盲導犬のほか、警察犬、爆発物捜索犬、麻薬捜索犬、災害救助犬などの訓練も手掛けている。特に警察犬、災害救助犬では富山県警の嘱託を受けたり、東京税関からは、爆発物を仕掛ける人物を探す犬を訓練するために指導を仰ぎに来るなど、公的機関からも全面的な信頼を得ている。

 救助犬はその鋭い嗅覚を使い、災害現場で瓦礫や倒壊家屋の下に埋もれた生存者を探したり、山岳遭難などの行方不明者を探す犬たちだ。災害(遭難)現場で生存者のにおいを探しまわり、においをかぎつけたら大きな声で吠えて指導手に知らせる。日本では、阪神・淡路大震災で一躍脚光を浴び、その後のトルコ大地震、台湾中部大地震、アメリカでの国際テロ事件でもその活躍ぶりがマスコミに紹介され、働く犬としてすっかりなじみ深い存在になった。

救助犬と警察犬のちがい
 警察犬は容疑者のにおいを覚えさせ、その特定のにおいをたどりながら追跡する。それに対して救助犬は不特定多数の人のにおいを災害現場から察知し、わずかな物音にも反応するよう訓練されている。救助犬は風で流れてくる浮遊臭を追って一点を探し当てる。したがって救助犬と警察犬では鼻の使い方や動作は根本的に異なるのだ。
※ここで言う警察犬は、足跡追求の訓練を受けた警察犬のこと。

 災害、遭難はいつ、どこで発生するか分らない。救助犬は、どのような時でも指導手の指示に従って捜索の仕事をきちんとこなせる犬でなければならない。救助犬に適しているのは、他の人や犬に対して友好的で、なおかつ大胆で行動力のある賢い犬である。臆病な犬は救助犬には向かない。自分から積極的に動きまわる行動力は、捜索を仕事とする犬には欠かせない要素である。このような条件を満たしてさえいれば、救助犬は犬種を問われることはない。

スイスでの救助犬チームの救助犬になるための3つの基準
1.瓦礫の下に埋まっている人間のにおいをかぎわけて、根気よく、また集中して捜索しなければならない。
2.さまざまな障害や誘惑に気をそらすことなく、困難に打ち克たなければならない。
3.瓦礫の奥深くから発するあらゆる臭気の中から、人間のにおいだけを識別し、その場所を人に知らせなければならない。

 一方、救助犬の訓練においては、犬を訓練するとともに指導手の訓練が非常に重要だ。特に山岳捜索においては体力とともに高度な技術を要することもあり、日頃から鍛錬しておく必要があるだろう。また犬と人間は対等のパートナーであることを認識しなければならない。訓練中に犬がミスをしても、それを咎めることなく包容して、犬を勇気づけることが肝心だ。人間側の最も重要な仕事は、災害(遭難)現場の状況把握だ。

 救助犬が必要な災害や遭難はそれほど多くあるわけではない。救助犬は、普段は普通の家庭犬として暮している。しかしその間にも訓練を続けていないと、人を探して遊んでもらう喜びを忘れてしまったり、足場の悪い場所を怖がるようになってしまう。何もしないと能力も体力も落ちてくる。そうならないためにも毎日の訓練が重要である。救助犬の訓練に終りはない。

 犬の訓練は、人間の子どもを育てることと一緒。愛情を持って根気よくしつけていくことが大切だ。しつけの基本は、してよいこと、悪いことの区別をしっかりと覚えさせることである。肝心なのは犬に信頼感を抱かせることだ。人との絆ができて初めて号令を聞いてくれる。

 試験に合格した指導手と犬は、もしもの時に備えている。しかし、その活動には大きな負担がかかる。出動の交通費、そのほかの必要経費はすべて協会あるいは個人が負担している状況だ。出動に関しては行政とのスムーズな連携も今後の課題になるだろう。

富山県警嘱託警察犬
 平成5年富山県警は全国の警察に先駆けて、災害救助犬を警察犬として嘱託することに決めた。従来、依頼者負担だった捜索費用も公費で賄われるようになるため、いっそうの活躍が期待される。救助犬は、特定の人のにおいをたどったりする従来の警察犬とは違い、瓦礫の下など見えないところにいる救助の必要な不特定の人をにおいだけではなく、気配を察知して探し出して知らせる。以前痴ほう気味のお年寄りを夜中の草むらから、わずか10分で見つけ出し、その件以来、富山県警では災害救助犬の能力と必要性を再確認、警察犬に加えることにした。

東京消防庁と「災害救助犬の出動に関する協定」を締結
 平成9年6月、災害救助犬協会富山と東京消防庁は、地震などの大規模災害が発生した場合に救助犬を出動させる協定を締結することに合意した。「災害救助犬の出動に関する協定」では、地震、土砂崩れなどで建物が倒壊し、人命救助が必要になった場合、同消防庁の要請に基づき、訓練士と犬が出動する。


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