2003年8月22日救助犬訓練報告
日頃は屋久島のためにいろいろとご尽力いただきありがとうございます。
屋久島救助犬協会では災害(遭難)対策の一つとして救助犬の育成をしておりますが、屋久島での救助犬訓練について皆様のご理解をいただきたく、下記の通り報告いたします。
年月日:2003年8月22日(晴)
行程:09:00〜14:00白谷広場〜楠川歩道〜太鼓岩〜楠川歩道〜白谷広場
15:50〜16:30屋久島空港
目的:環境および他人への馴致。運動能力および体力増進。
理由:遭難事故が起きた場合に実際に出動する地域で、また地震、台風、土石流、火山噴火などの災害を想定して日常の訓練を積むことが必要。面識のない被災者(遭難者)を救助するため、他人への友好性を高めることが必要。
訓練士:木下大然(訓練およびガイド)
訓練犬:雲居の雁(甲斐犬2歳8ヶ月♀・2002年10月27日救助犬第1種認定)
訓練内容:オンリードで歩きながら、または留まっての服従訓練、起伏の激しい登山道を歩くことによる障害物通過訓練、多くの観光客に会うことで他人への友好性を高める訓練、野生生物に興味を示すことを矯正する訓練、実際に遭難があり得る場所での捜索訓練等。
訓練中会った人や動物の反応:私のお客様2名は救助犬をツアーに同行したことについてとても喜んでいた。他の観光客約120名、ガイド10名、タクシー運転手2名、管理棟係員2名も殆ど好意的だった。殆どのガイドは救助犬について説明してくれた。私のお客様は国際的な某雑誌社の取材で、救助犬についても非常に興味を持ち、その雑誌で紹介してくれるとのこと。
途中シカに出会ったが、雁が少し興味を示すこともあったので、その場で捜索訓練をして、遭難者役に興味を向けるように誘導した。シカは殆ど警戒していなかった。
屋久島空港では職員、観光客とも殆ど好意的だった。警備員から救助犬の訓練等について聞かれたので簡潔に説明した。
以上です。
指導手が関与しない捜索訓練について
8月15日、雁が増水して川を渡れない人たちに反応したことにより、その人たちを救助することが出来ました。これは指導手が関与しない(号令を掛けない)捜索訓練が如何に大切であるかを示していると思います。屋久島では登山道等を歩いていてたまたま遭難者(或いは遭難しそうな人)に出くわす可能性があり、号令をかけて捜索モードにしなくても、人気の少ないところで静かにしている人や、不自然な動きをする人に反応する(興味を示す)というのは大事なことだと思います。今日も雁は登山道から外れて木に登っている人に反応しました。
アメリカの原野捜索ではこの型式を取り入れています。原野捜索は瓦礫捜索と違い、範囲が決っていないか、決っていたとしても面積が広大です。そのような捜索に一番適しているのは、「狩猟犬が一日中楽しそうに獲物を探すのと全く同じように、リラックスして楽しみながら報酬を得るために遭難者を探す」という型式です。
テンションを高めておいて「探して」の号令で捜索させる型式だと、集中して捜索行動ができる時間は10分から長くて30分です。これは元々地震、台風、土石流、火山噴火、雪崩などの災害を想定しての訓練で、狭い範囲の瓦礫や雪崩捜索には適しています。これと同じように、原野でも捜索する範囲を決めて号令をかけ、15分から20分捜索させたら一旦切り上げて休息させ、また別の範囲を決めて捜索させるということを繰り返すのが今までの私たち(日本の救助犬チーム)の発想でした。しかし広大な原野(山岳)捜索となると様子が全く違ってきます。そこでもっと持続性のある捜索方法を犬に習得してもらうため、私たちも指導手が一切関与せずに(指示も出さずに)遭難者役を発見させる型式を取り入れました。遭難者役からは犬に対して最大の報酬(大好物の食べ物やおもちゃなどでの楽しい遊び)を与えてもらい、「行動中に遭難者を見つけると良いことがある」という認識を犬に持たせ、山行中常に「どこかに遭難者はいないかな?」という気持ちで歩くように仕向けていきます。もちろん並行して瓦礫捜索の訓練も続けていきます。
8月15日に救助した人たちからは2万円いただきましたが、その内1万円は私たちが加盟している全国災害救助犬協会連合会本部・NPO法人災害救助犬協会富山に寄付させていただきます。
この報告は屋久島の山岳に関わる各関係機関およびガイド関係者に対し、屋久島救助犬協会が自主的に行っているものです。ご質問、ご意見等ございましたら下記までご一報ください。
鹿児島県熊毛郡屋久町安房2627-133
TEL/FAX 0997-46-3714
Mobile 090-9580-7862
E-mail = waken@bronze.ocn.ne.jp
URL = http://yakushima.org/rescudog.htm
屋久島救助犬協会
訓練士・指導手 木下大然
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