2003年9月18日救助犬訓練報告

 日頃は屋久島のためにいろいろとご尽力いただきありがとうございます。

 屋久島救助犬協会では災害(遭難)対策の一つとして救助犬の育成をしておりますが、屋久島での救助犬訓練について皆様のご理解をいただきたく、下記の通り報告いたします。

 年月日:2003年9月18日(晴)
 行程:10:30〜16:30白谷広場〜楠川歩道〜太鼓岩〜楠川歩道〜白谷広場
 目的:環境および他人への馴致。運動能力および体力増進。
 理由:遭難事故が起きた場合に実際に出動する地域で、また地震、台風、土石流、火山噴火などの災害を想定して日常の訓練を積むことが必要。面識のない被災者(遭難者)を救助するため、他人への友好性を高めることが必要。
 訓練士:木下大然(訓練およびガイド)
 訓練犬:雲居の雁(甲斐犬2歳9ヶ月♀・2002年10月27日救助犬第1種認定)
 訓練内容:多くの人に会うことで他人への友好性を高める訓練、初めて会う犬に対しての馴致、オンリードまたはオフリードで歩きながら、または留まっての服従訓練等。
 訓練中会った人や動物の反応:私たちのお客様2名は救助犬をツアーに同行したことについてとても喜んでいた。他の観光客約100名、ガイド10名、管理棟係員2名も殆ど好意的だった。他のガイドのお客様で救助犬にとても興味を持った人がいたので、森の中に隠れてもらい捜索訓練をした。

 途中サルに出会ったが、雁は殆ど興味を示さなかった。サルは殆ど警戒せず、5メートルほどの距離まで近寄ってきたものもいた。シカには5回以上出会った。雁はシカに対しては少し興味を示すこともあったので、その場で捜索訓練をして、遭難者役に興味を向けるように誘導した。シカは全く警戒しないものからかなり警戒するものまでいろいろだった。

 以上です。

屋久島マナービデオについて

 屋久島環境文化村センター等で放映している「屋久島マナービデオ」の中では、「ペットの持ち込みは野生生物に病気を移す恐れがあるので、ペットは山に連れて行かないようにしましょう。」と謳っています。マナービデオの企画・製作は環境省ですが、2002年7月8日に環境省屋久島世界遺産センターにおいて、屋久島マナービデオの作成についての意見交換会をしており、そのとき自然保護官はペットを持ち込まない理由として、「犬を媒介したエキノコックスなどの寄生虫を持ち込む危険。野生生物に対して吠えたり追いかけたりして生態系に悪影響を与える。犬が嫌いな人への迷惑。」と言っています。それに対して元環境庁レンジャーのガイドから、「犬と一緒に山を楽しむ権利を奪わないで欲しい。少しくらいシカやサルを追いかけたからと言って生態系に対する悪影響はない。屋久島では昔からヤクシマイヌを飼って狩猟に使ってきたが、それでサルやシカが激減したということはない。北海道ならエキノコックスの問題もあるが、犬の病気がシカやサルに移るとは考えにくい。他人に迷惑ということをあげればタバコや山小屋でのマナーなどきりがない。」という意見が出されました。また屋久島に来て20年以上になるガイドからは、「今のシカは人間に馴れすぎているから、野生を維持するためにも多少犬に吠えられて人間との距離を保つ方が良い。」という意見が出されました。他にも意見はありましたが、ほぼ同じような内容で、殆どの人は犬を連れて入ることに肯定的でした。しかしその後つくられたマナービデオの内容を見る限り、このときガイド側から出された意見は全く無視されています。
 犬が野生生物に病気を移すというのであれば、里で飼っている多くの犬はどうなのでしょう?野生生物は里と山を行き来します。日本よりはるかに野生生物を大切にしているはずのカナダでも、バンフ国立公園等では犬を連れて登山する人も多く、どの犬も皆しつけが行き届いています。問題なのは犬のしつけや予防接種等の健康管理であり、そのような指導さえ行き届けば何も問題は起きないと思います。犬嫌いの人は子供の頃恐ろしい目にあっていることが多く、そのような犬を管理している飼主に責任があると思います。
 またマナービデオの中で「携帯電話は非常時以外使わないようにしましょう。」とありますが、非常時には使えない場合が多く、むしろ遭難事故ではその前の通話情報が有力な手掛かりとなる可能性が高いでしょう。アマチュア無線にしても同様です。
 このように、マナービデオは実際フィールドでの調査を積んでつくった訳ではなく、科学的根拠に乏しく、ガイド側の意見を無視し、非常にお粗末な内容だと思います。

 この報告は屋久島の山岳に関わる各関係機関およびガイド関係者に対し、屋久島救助犬協会が自主的に行っているものです。ご質問、ご意見等ございましたら下記までご一報ください。

鹿児島県熊毛郡屋久町安房2627-133
TEL/FAX 0997-46-3714
Mobile 090-9580-7862
E-mail = waken@bronze.ocn.ne.jp
URL = http://yakushima.org/rescudog.htm
屋久島救助犬協会
訓練士・指導手 木下大然

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