設置に至る経緯

なぜアマチュア無線局なのか?

 屋久島では年間20件前後の山岳遭難事故が起っています。その捜索活動において、アマチュア無線はお互いの連絡用に欠かせないものとなっています。屋久島の捜索隊の無線を100kmも離れた鹿児島市内のタクシー運転手がいち早く傍受して警察に通報した例もあります。登山者が怪我や病気で動けなくなった時なども、無線により緊急連絡がとれれば、適切な対処が可能となります。私たちはお互いの連絡効率を上げるため、またアマチュア無線の振興のためにレピータ局(中継局)の開設計画を進めてきました。

 国家試験による免許が必要なアマチュア無線よりも、誰もが使え、しかも抜群の普及率を誇る携帯電話の中継局の方が良いのではないかという意見もあります。確かに普及率の点でも、手軽さの点でも、携帯電話を山中どこからでも使えるようにできればそれに越したことはありません。ところが携帯電話の電波の出力は800mW(基地局4W)しかありません。しかも800MHzという極超短波では電波は直線的にしか飛ばず、障害物があると届きません。そのため都会では中継局を数百メートルごとに多数設置することで広い通信エリアを確保しているわけです。アマチュア無線のレピータ局(中継局)は日本では430MHz帯で出力10Wが主流です。それを見通しの利く所に設置すれば絶大な通信エリア拡大が可能ですが、携帯電話中継局の場合は多数の設置が必要となるわけです。また携帯電話は完全な営利目的の通信システムであり、利用料を徴収することで成立しているため、当然中継局は利用者の多い所にしか設置されないことになります。都会では便利な携帯電話も利用者の少ない山岳地帯ではほとんど役立たずになってしまうわけです。またアマチュア無線は同じ周波数を複数の局が使用することが可能です。レピータ局ともなれば多数の利用者がいるため、一日中誰かが聞いているものです。

 アマチュア無線は非営利目的であることを条件に認可されています。そのためレピータ局も非営利目的でなければ運用ができません。逆に言うとアマチュア無線の免許さえ持っていれば無料で利用できる施設なのです。また受信だけなら無免許者でも可能で、それこそ誰もが無料で利用できる施設なのです。非営利目的であることが絶対条件のため、当然ながら利用料等を徴収することはできません。つまり設置、運営、管理等の経費は全て寄付やボランティアで賄うことになります。そのため一人でも多くの賛同者と支援者が必要なのです。

 日本のレピータ局の主流となっている430MHz帯の電波は、携帯電話の800MHz帯ほどではありませんが直進性があり、基本的には見通し範囲内にしか届きません。そのため小さなトランシーバー同志では通常数kmほどの範囲内でしか通信ができません。ところがそんな小さなトランシーバーでも高い山の山頂などから発信すると、一気に数十kmから時には数百kmまで電波が届くようになります。山頂からの電波は遠くまで直進性が確保されるためそれが可能になるのです。そこでレピータ局、つまり電波を受け、それを送信する中継局を高い山の山頂に設けることで、普段はせいぜい数km以内の範囲にしか通信可能エリアを持たない小型トランシーバーが、一気に数十km以上もの広範囲に通信可能エリアを拡大します。これまで登山に小型トランシーバーを持って行っても、せいぜい数kmの連絡用くらいにしか役立たなかったのが、レピータ局があれば一気に利用価値が拡大するわけです。現状の屋久島では登山者が奥深い山中に入ってしまうと、もう通信手段は皆無に等しい状況だったのが、レピータ局を設置すればこれまでとは段違いの通信可能エリアが確保されることになるのです。これまで山中に入ってしまうと「連絡が取れなくてあたりまえ」だったのが「連絡が取れてあたりまえ」ということになり、常に危険が潜む登山の安全性が格段に向上することになります。ちなみにこの日本には既に1200局あまりのレピータ局が設置されています。

 屋久島レピータ局は計画レピータ局です。計画レピータ局は設置条件が良く、広い範囲で利用することが出来るレピータ局としてJARL(社団法人日本アマチュア無線連盟)に認められたレピータ局です。これからも出来るだけ多くの人に利用していただけるよう、皆様にご協力お願い申し上げます。

屋久島レピータ局管理団体代表 木下大然

439.50MHz 屋久島レピータ局管理団体

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