2004年10月救助犬訓練報告
日頃は屋久島のためにいろいろとご尽力いただきありがとうございます。
屋久島救助犬協会では災害(遭難)対策の一つとして救助犬の育成をしておりますが、屋久島での救助犬訓練について皆様のご理解をいただきたく、以下の通り報告いたします。
≪大然&雁チーム≫
期間:2004年10月1日〜11月2日
場所:屋久島の山岳、河川、海岸、市街地等。富山、長野、広島、福岡等。
目的:環境および他人への馴致。運動能力および体力増進。訓練士の見識を深める。全国災害救助犬認定審査会への参加。救助犬の広報、指導。
理由:屋久島以外の地域に出動することを想定し、あらゆる環境に馴致させることが必要。遭難事故が起きた場合に実際に出動する地域で、また地震、台風、土石流、火山噴火などの災害を想定して日常の訓練を積むことが必要。面識のない被災者(遭難者)を救助するため、他人への友好性を高めることが必要。プロの訓練士や同じ目的意識を持つ人たちとの交流によって訓練士の見識を深めることが必要。多くの人に救助犬を理解してもらうための広報や、救助犬ハンドラーを目指す人への指導が必要。
トレーナー・ハンドラー:木下大然
ヘルパー:スタッフ、エコツアー参加者、ドッグトレーナー専攻学生、救助犬仲間、その他の協力者
訓練犬:雁(甲斐犬3歳10ヶ月♀・2002年10月27日、2003年10月26日救助犬第1種認定、2004年10月24日救助犬第3種認定)
訓練内容:フェリー、自動車に乗せて長距離を移動する訓練、電車、踏み切り、サイレン、工事現場等、都会の喧噪に馴致させる訓練、多くの人に会うことで他人への友好性を高める訓練、オンリードまたはオフリードで歩きながら、または留まっての服従訓練、山岳、河川、海岸、市街地において環境に馴致させ、運動能力を高める訓練、爆竹を使った破裂音に馴致させる訓練、森の中、岩陰、瓦礫、建物に隠れての捜索訓練等。訓練の詳細については以下のページを参照のこと。
雁の健康管理と訓練日誌(2004年)
http://yakushima.org/kari2004.htm
≪平山&凛チーム/餅田&ピリカチーム≫
期間:2004年10月1日〜11月2日
場所:屋久島の山岳、河川、海岸、市街地等。富山、長野、広島、福岡等。
目的:環境および他人への馴致。運動能力および体力増進。訓練士の見識を深める。全国災害救助犬認定審査会の見学。
理由:救助犬として必要な要素である、他人や他の犬に対する友好性や様々な環境下で作業する能力を養い、物怖じせず情緒豊かにしていくため。
トレーナー・ハンドラー:平山未来/餅田明人
ヘルパー:スタッフ、ドッグトレーナー専攻学生、救助犬仲間、その他の協力者
訓練犬:凛(甲斐犬4ヶ月♀)
ピリカ(甲斐犬4ヶ月♀)
訓練内容:「おすわり」、「ふせ」、「ついて」等の服従訓練や、日常の動作に号令をかけ、動作と結び付かせる訓練、人ごみに連れて行ったり、他人に餌をもらったり抱いてもらったり遊んでもらったりして、他人に馴致させる訓練、他の犬に馴致させる訓練、山、川、海に連れて行き、運動能力を高め環境に馴致させる訓練、爆竹を使った破裂音に馴致させる訓練、ランナウェイ(追い掛けっこ)訓練、「吠えろ」の訓練等。訓練の詳細については以下のページを参照のこと。
凛の健康管理と訓練日誌(2004年)
http://yakushima.org/rin2004.htm
ピリカの健康管理と訓練日誌(2004年)
http://yakushima.org/pirica2004.htm
訓練成果:旅行中、リードでつないだ近くで食事をしていると度々要求吠えをしたので、「吠えろ」の訓練をしたところすぐに覚えた。
≪井澤&夏チーム≫
期間:2004年10月15日〜11月2日
場所:富山、長野、広島、福岡等。
目的:環境および他人への馴致。運動能力および体力増進。訓練士の見識を深める。全国災害救助犬認定審査会の見学。
理由:救助犬として必要な要素である、他人や他の犬に対する友好性や様々な環境下で作業する能力を養い、物怖じせず情緒豊かにしていくため。
トレーナー・ハンドラー:井澤啓二
ヘルパー:スタッフ、その他の協力者
訓練犬:夏(甲斐犬2ヶ月♀)
訓練内容:人ごみに連れて行ったり、他人に餌をもらったり抱いてもらったり遊んでもらったりして、他人に馴致させる訓練、他の犬に馴致させる訓練、山、川、海に連れて行き、運動能力を高め環境に馴致させる訓練、爆竹を使った破裂音に馴致させる訓練、ランナウェイ訓練、「吠えろ」の訓練等。訓練の詳細については以下のページを参照のこと。
夏の健康管理と訓練日誌(2004年)
http://yakushima.org/natu2004.htm
訓練成果:他人に対して非常に友好的に育っている。旅行中、リードでつないだ近くで食事をしていると度々要求吠えをしたので、「吠えろ」の訓練をしたところすぐに覚えた。爆竹は初め刺激が強すぎてご褒美をあげても食べなかったが、少し刺激を弱めたら食べるようになった。ランナウェイはヘルパー(逃げる役)が誰でも喜んで追い掛ける。
以上です。
新潟県中越地震
10月15日から11月2日まで、屋久島の救助犬に関わるスタッフ一同で旅をしてきました。今回の旅は救助犬の審査会、合同訓練、軽井沢のクマ対策犬見学が目的でしたが、審査会の最中に新潟県中越地震があり、急遽出動することになりました。しかしその時点では犬を使う現場が見当らず、また被害の大きい地区は道路が寸断されていて入れませんでした。展望もないのに無理に混乱した地区に入っても、ライフライン確保のための緊急自動車の妨害等、却って迷惑をかけてしまうのではないかということで、結局途中で待機したまま解散しました。
地震発生から5日目に、土砂崩れ現場でワゴン車の中から2歳男児が助け出されましたが、この時ワゴン車の中に生存者がいることを知らせたのは警視庁の救助犬でした。私たちのグループの犬でなくても、救助犬が役立ったニュースを聞くと嬉しいです。
被災された皆様には謹んでお見舞い申し上げます。また逝去された方々にはご冥福お祈り申し上げます。そして被災地が一日も早く復旧することを心よりお祈り申し上げます。
救助犬審査会
10月23日、24日の2日間、富山県婦負郡山田村の牛岳スキー場にて第11回全国災害救助犬認定審査会が行われました。大然&雁チームが出場しましたが、24日は朝から新潟に向けて出動したので、この日の審査は受けることができませんでした。しかし同チームは昨年の審査で救助犬第1種(服従作業、平地捜索作業ができるチーム)に合格していること、今年の審査で服従作業、瓦礫捜索作業において良い成績を修めたこと、また新潟の救助活動に積極的に関りたいという意志を考慮していただけたようで、救助犬第3種(服従作業、平地捜索作業、瓦礫捜索作業ができるチーム)に認定されました。
新潟から富山に戻った時、今回の審査会の審査員で、日本のトップクラスの訓練士でもある大原茂雄氏から、次のようなコメントをいただきました。
「私が初めて雁の審査をした時、『やはり甲斐犬だな、動きが今一つだ、まあこんなものだろう。』と感じた。翌年の審査では、『なかなかやるな、でもまだ少し動きがにぶい。』そして今年の審査では、『もうシェパードやラブにも引けを取らない動きをしている。よくぞここまで訓練したものだ。』プロの訓練士では甲斐犬をここまで訓練することはできない。やはり人と犬との深い絆があったからこそここまで仕上げることができたのだろう。これからも頑張ってほしい。」
この言葉を胸に、これからも一層努力していきたいと思います。
軽井沢でクマ対策犬見学
長野県北佐久郡軽井沢町のエコツアー会社「ピッキオ」を訪ね、クマ対策犬について詳しくお話を伺いました。昨年5月、第11回環境自治体会議屋久島会議において、ピッキオ代表の南正人氏がクマ対策犬について話題を提供された時から、私はエコツアーの中で「犬を使ってクマを山に戻す方法もある。犬が人の生活だけでなく、自然を守るために役立っている。」ということをよく話すようになりました。長野県小諸市に住む「雁」の父犬「すぐり」のハンドラー山下國廣氏が、ピッキオのクマ対策犬育成に関わることになったのも何かのご縁でしょう。
ツキノワグマの被害防除と保護管理のための調査・対策事業を軽井沢町から受託しているピッキオでは、クマと人が共存できる道を探り、クマを野生のままに山に戻す方法として、北米で成功している「犬(カレリアン・ベア・ドッグ)を使ってクマを教育する方法」を導入しました。その犬たちは北米では職業犬(サービスドッグ)として正式に認められており、人に対しても友好的に訓練されています。ピッキオではスタッフ2名がベア・ドッグのハンドラーとして選ばれ、今年6月に北米から2頭のベア・ドッグの子犬「ブレット(雄)」と「ルナ(雌)」を導入しました。今年は軽井沢でも何度もクマが里まで下りて来て、早速ブレットとルナが活躍しています。
ベア・ドッグを利用したクマ対策
http://npo.picchio.jp/management/05.html
福岡市での合同訓練
10月29日から11月1日まで、福岡市で甲斐犬を救助犬にするために頑張っているチームと合同訓練をしてきました。ランナウェイ訓練、捜索訓練、爆竹を用いて破裂音への馴致訓練(1発から連発まで)、障害物通過訓練等、とても有意義な合同訓練になりました。福岡チームの武蔵(たけぞう)は、昨年に比べると独占欲や喧嘩欲も抑制され、簡単な捜索もできるようになりました。大きな進歩です。これからはヘルパーが武蔵の意識を途切れさせないようにいろいろと工夫して、更に捜索意欲を高めていくことができれば良いでしょう。依然として神経質なところはありますが、捜索意欲などの良い面を延ばしていくことで、それもだんだん気にならなくなっていくでしょう。私たちが滞在している間に梯子を下りることもできるようになりました。初めは梯子を2段ほど下りたところに板を渡してスロープにし、号令とともに下ろそうとしましたが、なかなか怖がって下りませんでした。しかしハンドラーが武蔵の大好きな「散歩に行こう!」という言葉を口にしたとたん、一気に下りてきました。犬の訓練も意外なことで道が開けるものですね。
10月17日から27日まで一緒に旅をし、訓練を手伝ってもらったOCAの学生からは、以下のような感想文が届きました。
「この間は本当にありがとうございました。研修中、学校では学べない体験ばかりをさせていただき、凄く自分たちの勉強になりました。犬の訓練はもちろん、それ以上に人生において大切な事も教わりました。また是非機会があれば、今度は社会人として屋久島に向かいたいと思います。また宜しくお願いします。OCA研修生一同」
以下のページも併せてご覧ください。
http://yakushima.org/rd0410.htm
この報告は屋久島の山岳に関わる各関係機関およびガイド関係者、また救助犬関係者に対し、屋久島救助犬協会が自主的に行っているものです。ご質問、ご意見等ございましたら下記までご一報ください。
鹿児島県熊毛郡屋久町安房2627-133
TEL/FAX 0997-46-3714
Mobile 090-9580-7862
E-mail = waken@bronze.ocn.ne.jp
URL = http://yakushima.org/rescudog.htm
屋久島救助犬協会
トレーナー・ハンドラー:木下大然
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