屋久島町長選予定候補者に対する公開質問状への回答
 2011年10月30日投開票予定の屋久島町長選挙を前に、原発はいらない屋久島の会では、原発の問題についての公開質問を実施しました。以下に各予定候補にお送りした公開質問状本文、各予定候補の回答を掲載します。掲載順は五十音順、回答がなかったところは「回答なし」としています。各予定候補の考え方を理解し、皆様が投票する際の参考としていただければ幸いです。
質問内容(簡略化してあります。詳細は下方をご覧ください。)
【質問1】 福島第一原発の状況をどのようにお考えでしょうか?
【質問2】 川内原発で事故が起きた場合には、九州、四国、本州全域が緊急避難地域となることも予想されますが、どのようにお考えでしょうか?
【質問3】 鹿児島県に有効な防災対策がないままに原発が稼働していることについて、どのようにお考えでしょうか?
【質問4】 川内原発の安全性は保証されているとお考えでしょうか?
荒木 耕治 氏(3,326票)
【質問1回答】 私達、屋久島に住む人間は、今日まで原発に関する知識も関心もなく他人事のようなことと考えてきたような気がする。原発に頼らずとも屋久島のエネルギーは水力発電であり、先人達もこのエネルギーによって日々の生活を営んできた。しかし、福島第一原発事故の報道が流れる中、鹿児島にも原発があり他人事では無いことを肌で感じ、関心も高まり日々の報道も注意深く見るようになったことは確かである。放射能を大量に放出し続け多大な被害を広範囲にもたらした状況を考えると、数十年、あるいは数百年苦しい思いをしながら生活しなければならない事は明白であり、このような現実を、屋久島を背負って立つ将来ある子供達に絶対残してはならない。
【質問2回答】 火山列島日本では、どこで大規模な地震が起きてもおかしくない。まして鹿児島には新燃岳、桜島など頻繁に噴火している火山があり、さらに屋久島の隣にも口永良部島、硫黄島と頻繁に噴火している火山島がある。これらの火山の噴火による大規模地震や火砕流により、川内原発に事故が起きないという保障はない。福島第一原発同様の災害発生が予想され、甚大な被害が広範囲に起り、風向きによっては種子島、屋久島など離島も避難の対象区域になることも予想される。このような状況を想定した防災計画の指針を国、県が早急に示すべきであり、地域住民も日頃から地震、原発等の事故に対応できる休制を整えるべきである。
【質問3回答】 福島原発の事故が、東電が言う「想定外の大災害」のように、ほんとうに想定外だったのか。この想定外を盛り込んだ防災計画の早急な整備が必要だろう。鹿児島県知事も福島原発事故を目の当たりにして、県の原子力防災計画が意味をなさないものであることを痛感したはずである。この特殊な防災計画なるものは、何も事故がなければ見直し論議は起らず、事故が発生して初めて見直しを迫られるものである。県も安全、安心な防災対策を十分検討して県民に示すべきである。そのような説明責任を果さない原発再稼動はありえない。現時点で稼働中の原発については、国に代替エネルギーへの移行を求め、住民の生命と暮しを守ることを要望していく。9月19日、東京明治公園で6万人集った「さようなら原発5万人集会」で分かるように原発に対する関心が高まっており、国は代替エネルギーを早急に検討し対処するべきである。
【質問4回答】 川内原発1号機の運転再開について「国が安全を保証するから安全だ」という安全神話に基づいた原発稼動はあってはならないことである。福島原発で安全神話は崩れ、国・東電が背負った負担は計り知れないものがある。国が安全を保障するから安心だと安易な考え方で原発推進をやるべきではない。しかし、原発に代わる代替エネルギーへの移行は最大の課題であり、何度も繰り返すよう国策で早急な決断が望まれる。原発が安全だと言い切れる確証は何もない。
荒木 博武 氏(1,166票)
【質問1回答】 回答なし 【質問2回答】 回答なし 【質問3回答】 回答なし 【質問4回答】 回答なし
小脇 清治 氏(2,959票)
【質問1回答】 質問には、ただ、大変なことです。とお答えするしかありません。
【質問2回答】 福島の事故は地震ではなく津波の被害です。川内においては太平洋側ほどの太津波は考えられず、過去の記録も今のところ見つかっていません。また噴火については、南九州一帯が過去に何度も大火砕流に襲われていることは事実です。近くでも縄文時代の例があり、それによって当地の縄文人は全滅し、遺跡はかなりの期間途絶えています。同様の規模の噴火がまたあったら、原発事故の前に全住民が大火砕流で焼き尽くされることでしょう。
【質問3回答】 世の中に完全な防災対策というのはありえません。福島の例など参考に防災対策を見直し、より完璧なものにしていくよう努力するしかありません。
【質問4回答】 「全米での乳癌患者の3分の2が原発から100マイル以内に住んでいた」云々は信憑性に欠けます。被爆量は単純に距離に比例するのではなく、地形や気象の影響を大きく受けます。また住んでいたのは何年間か?何歳の時か?どういう生活をしていたか?なぜ乳癌なのか?(甲状腺癌の方が影響大のはず)などなど、疑問だらけです。
【その他】 総合所見 福島の事故は、人は原子力を使いこなすには愚か過ぎるということの証明だと考えます。人は賢くなれそうにないので、原子力は諦めざるを得ません。しかしそれを性急にやると、電力不足で日本の産業は衰退します。そうすると日本は貧乏になって外国から物を買うことができません。食糧も買えず、また日本の農業は、農業機械も肥料も資材もさらに輸送もすべて石油漬けですから、国内農業も低迷します。生活水準を江戸時代程度まで落としたとしても、国民の3分の2が餓死するでしょう。結局、脱原発と脱石油を並行して、さらに新しい産業を興しながら、時間をかけて着実にやっていくしかおりません。電気は分散発電による再生可能エネルギーの活用を推し進めるべきですが、その前提として全国の送配電網のスマートグリッド化が必須になり、それには10年単位の期間が必要です。
日高 十七郎 氏(2,101票)
【質問1回答】 「後顧の憂い」で済まされない、人類にとって最悪の事態です。唯一の被爆国として、採用してはならない原発依存の政策は、重大な過誤を犯しました。速やかな方向の転換をすべきです。
【質問2回答】 大きな不安は払拭できません。微細に渡る検査検証をなし、克明な情報の公開が急務です。その上で徐々にクリーンエネルギー移行を進めるべきです。それが、国・県の進めるべき策であり、手段です。
【質問3回答】 生命の尊厳という視点において防災対策は有効かつ速やかに機能しなければなりません。とりわけ原子力防災計画は、このたびの国難における想定事項等を徹底的に検証し、鹿児島県における原子力防災計画を抜本的に見直す必要があります。早期の対応を強く望みます。
【質問4回答】 疑念は払拭できません。安全神話の崩壊は人々の英知を持ってしても防ぐことが困難な側面を有している事が、このたびの大惨事です。従って「国が安全といっているから」という前提は、すべての安全性が保証され(た)という事ではない。
【その他】 原発no! よろしくお取り計らいください。
質問内容(詳細)
【質問1】 福島第一原発は、核燃料がメルトスルーを起こし、現在どういう状況にあるのか分かっていません。核燃料は圧力容器ばかりか格納容器も貫通し、地下に潜って再度水蒸気爆発を起こす危険も指摘されています。放射能を大量に放出し続け、破滅的な危険を背負ったままの原発と、数十年、数百年格闘しなければならないと言われています。この状況をどのようにお考えでしょうか?
【質問2】 最近、新燃岳や桜島の火山活動が活発化しています。大正時代の関東大震災と桜島の噴火は連動していると言われています。川内原発の近くには中央構造線が走り、他にも多くの断層が確認され、さらに火砕流が数メートルも積もっているところが確認されています。いつ川内原発に大地震が起きても、また火山噴火による火砕流が押し寄せてきてもおかしくない状況です。このままでは川内原発でも福島第一原発と同様の事故が起きる可能性が高いでしょう。事故が起きた場合には、風向きの関係により、福島の事故の数十倍以上の規模で汚染が広がり、九州全域、四国全域、本州全域が緊急避難地域となることも予想されます。このことについて、どのようにお考えでしょうか?
【質問3】 福島原発の事故は、鹿児島県の原子力防災計画が、範囲をはじめ様々な想定事項において、根底から意味をなさないものであることを明らかにしました。現状は、鹿児島県に有効な防災対策がないままに原発が稼働しているという、あってはならない状況だと言って良いでしょう。このことについて、どのようにお考えでしょうか?
【質問4】 アメリカでの調査によれば、全米での乳癌患者の3分の2が原発から100マイル(約160キロメートル)以内に住んでいたことが分かっています。屋久島も川内原発から160キロメートルしか離れていません。町長は町民の「いのちと暮し」を守り、育てることが最大使命だと考えられます。とするならば、この屋久島にも川内原発1号機の運転再開にあたって、「国が安全を保証するから安全だ」というような態度をとることは許されないのではないでしょうか。原発は国策として推進されてきたのだとしても、地域に最も責任を負う立場にある町長としては、独自にかつ主体的に判断することが求められるはずです。「国が安全と言っているから」という言い訳を排除してなお、川内原発の安全性は保証されているとお考えでしょうか?
参考資料
【原発による温暖化加速、自然破壊、健康被害】 原発はエネルギーの3分の2を温廃水として海に捨てています。100万kWの原発で、1秒間に70トンもの海水を引き込み、7℃上げながら海に戻しています。川内原発では、現在稼働している1、2号機で、九州第2の大河川、川内川と同じ流量が放水されています。温暖化防止どころか、加速していることになります。また引き込んだ海水には大量の塩素が混ぜられ、トリチウム、コバルト60、マンガン54といった放射性物質も海に捨てられています。周辺では海藻類が壊滅状態となり、ウミガメ、サメ、クジラなどが大量に死亡漂着し、漁業被害も甚大です。地上ではクローンであるはずのソメイヨシノにまで奇形が見られ(ソメイヨシノの異変)、さらに薩摩川内市の35歳から44歳までの医療費は、全国平均の2.5倍と突出しています(2010年6月18日「FRIDAY」)。
【福島原発事故の原因は地震】 原子力安全・保安院は2011年4月27日の衆院経済産業委員会で、地震により受電鉄塔1基が倒壊して全電源喪失・炉心溶融に至ったことを認め、その原因が津波にない(地震にある)ことを明らかにしました(2011年4月30日「しんぶん赤旗」)。福島原発は欠陥工事だらけであり、通産省の検査は不正で合格させてきました。福島の事故では、津波の前に配管破断が起きていたことはほぼ間違いありません{菊地洋一氏(元GE技術者・福島第一原発6号機建設総責任者)談}。
【原発事故は他の災害とは異質】 原発事故は他の災害とは比較になりません。崩壊熱が収まるまでには100万年もかかり、被曝によって人を含む全ての動植物は遺伝子異常を来し、さらにそれは代々遺伝していくからです。チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシでは生まれてくる子供の85%が何らかの障害を持っています(映画「チェルノブイリ・ハート」」より)。
【原発と癌発生の因果関係は明らか】 アメリカ国内で8人の良心的な科学者・研究者が中心となって調査・研究を進めた結果、原発周辺で集めた乳歯中のストロンチウム90の量が経年的に増大していることが分かりました。原発周辺地域で小児癌に罹った子供達の乳歯だけを集めて調べてみると、その他の子供達よりもストロンチウム90の量が格段に高かったのです。これは小児癌と原発との間にある因果関係を証拠づけるものです。実際、CDC(米国疾病管理・予防センター)が公表している癌統計を調べると、米全土で発生している乳癌の3分の2は、原発や核関連施設から100マイル(約160キロメートル)以内の地域で発生しています。また、北カリフォルニアの調査では、原発閉鎖後、小児癌の発生率は18%下がり、南カリフォルニアでは、原発稼働後、出産時死亡率が15%上昇、小児癌は75%も増加しました。原発と癌発生の因果関係は明らかです。 【再生可能エネルギーへの道】 国内の火力発電所は1億7,500万kWの設備容量を持ちながら稼働率は50%以下であるのに対し、原発は5,000万kW以下ですが稼働率は70%もあります。原発は非常に不安定な電源なので、事故が起きて止まった時の予備として火力発電所が必要であり、そのために火力に十分余裕を持たせているのです。また、これから脱原発をして再生可能エネルギーに移行していく道筋として、全ての火力発電と揚水発電を稼動させ、民間の自家発電を稼動させ、さらにエネルギー効率の高いコンバインドサイクル発電への置き換え、小型ガス・タービンによる地域のコジェネレーションの推進をしていく等、まずは原子力から熱効率の高いエネルギーに移行し、その先に自然エネルギー、再生可能エネルギーへの道を探れば良いのです{藤田祐幸氏(物理学者)談}。

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屋久島町長選予定候補者に対する公開質問状

 「馬毛島の軍事施設化を許さない屋久島の会」でも、町長選予定候補者と意見交換会をし、その内容を公開しておりますので、こちらも併せてご覧ください。

屋久島町長選予定候補者との意見交換会
(馬毛島の軍事施設化を許さない屋久島の会)

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