3.しつけの基本 |
犬は人同様、リーダーを中心とした群をつくります。その点では人と思考がよく似ていると考えられるでしょう。つまり、犬にとっては人も群の一員であり、その中でリーダーに従っていると考えれば良いでしょう。もし人がリーダーとして相応しくなければ、犬はその人に従おうとはしません。一番大切なことは、人と犬との信頼関係を築くことです。信頼関係ができるまでは犬を叱ったり、犬が嫌がることは避けなければなりません。そのような状況をつくらないことも大切です。例えば、児童が学校で嫌いな先生に叱られたら、彼(彼女)はその先生をもっと嫌いになるでしょう。またその先生に何か指示を受けても従いたくないでしょう。 しつけの基本は犬が喜ぶことや望むことを活かしながら、人が望む方向に導いていくことです。まずは仔犬に「人はいつでも楽しく遊んでくれる」という意識を付けていきます。タオル、軍手、紐などを引っ張り合ったり、ボールを転がしたりして遊んであげると良いでしょう。そのために仔犬が一番喜ぶおもちゃを見付けてあげてください。ただし必ず飽きる前にやめておもちゃを取り上げます。それは「もっと遊びたい」という気持を残しておくことが、次回の遊びの意欲につながるからです。食いしん坊の仔犬には、餌を使用して人が望む方向に導いたり、それがうまくできたら餌をあげて褒めたりするのも良いでしょう。方法につきましては、「仔犬を迎える準備」の「1.ご用意いただくもの/室内飼いの注意点」および「2.餌の選び方、与え方/食べさせてはいけないもの」に要点を記しておきましたので、ここでは省かせていただきます。訓練士の中には「報酬は餌よりおもちゃのほうが良い」と言う人もいますが、犬が喜べば良いのですから、犬の様子を見ながら使い分けるようにすれば良いでしょう。人も仕事をして報酬(給料)をもらえれば嬉しいのと同じで、犬にとって餌やおもちゃは私たちの給料に当たる訳です。 仔犬は褒めながら育てていくことが大切です。人が望むことをした時には褒め、望まないことをした時には無視をします。しかし、人が望まないことが犬にとっては逆にとても楽しいことであったり、或いは本能的に抑えきれないことであったりすると、無視をした位ではやめさせることができません。例えば狩猟本能が強い犬は鳥やネコなどを襲うかも知れませんし、気が強い犬は他の犬と喧嘩をするかも知れません。無視をしても犬は勝手にやって満足してしまいますし、その時には既に取返しがつかないことになっているかも知れません。そうならないようにするためには、まずは犬にリードを付けて、犬が求めている対象に興奮しない程度のぎりぎりの距離を保ち、興味は示してもそれ以上近寄ろうとしたり吠え掛かったりしなければ、褒めて報酬を与えてください。それを続けていけば、ある程度の距離までは我慢できるようになるでしょう。それでも抑えきれなければ、罰を与えることも必要になってきます。方法は投鎖などによる天罰、リモートトレーナー、チョークチェーン等いろいろありますが、使い方を誤ると却って逆効果になりますので、慎重に取り組まなければなりません。また人と犬との信頼関係を保つためにも、なるべく人が罰を与えていることを見抜かれないようにすることと、罰を与えたらその10倍以上は褒める機会をつくるように心掛けましょう。 リモートトレーナーは遠隔操作で犬の体に電気を流してショックを与え、問題行動を矯正する道具です。ご使用の際には説明書を良くお読みいただき、心配であれば獣医師等にご相談ください。私の使用しているものは手動で電気を流すタイプなので、犬の体調を見ながら電気の強さを調整したり、音だけで警告することも可能です。初めに警告音を鳴らしてその行為をやめなければ電気を流すようにすれば、そのうち警告音だけでやめるようになります。チョークチェーンはプロの訓練士が問題行動を矯正するのによく使う道具で、首にショックを与えることで矯正します。これらの矯正法は犬に苦痛を与えてかわいそうに思えるかも知れませんが、問題行動を起した時に与える罰に効果が少なければ何回も罰を与えることになってしまい、犬との信頼関係を悪化させたり犬に余計なストレスを与えたりしますし、飼主自身もストレスを溜めることになるでしょう。私は、多少リスクがあっても効果的な罰により問題を早く解決させて、その後は犬とのゆったりした生活を楽しむほうが、犬にとっても人にとっても結果的に幸せだと思います。僅かな苦痛で問題行動が無くなるのであれば、その後は犬を思う存分褒めながらしつけを進めることができ、飼主にとっては余計な手間が掛からず、犬にとってはより多くの楽しい時間を過すことができるようになるからです。ただしチョークチェーンは使い方が非常に難しいので、プロの訓練士に直接指導してもらえる環境でない限りお勧めしません。 家庭犬、救助犬、介助犬、猟犬等、その目的によって仕上げるための訓練方法は異なりますが、いずれも人の指示に従うという点では一致していますし、その基本となるのが服従訓練です。服従訓練とは「座れ」、「伏せ」、「立て」、「付け」、「待て」、「来い」等の号令に従わせることで、室内飼いでもできますし、組み合せながら繰り返せば良い運動にもなります。また犬種や個性にもよりますが、飼主の都合によって室内でおとなしく過すような犬にも、野外で活動的に過すような犬にも、その両方を併せ持つような犬にも育てることが可能です。例えば普段は室内でおとなしく過し、休日には飼主と一緒にアジリティ、フリスビー、登山などをしてアクティブに過している犬もいます。当犬舎で救助犬として育成している甲斐犬「雲居の雁」は正にそのような犬で、優れた運動能力と落ち着いた雰囲気を併せ持っています。 犬によって性格は千差万別です。例え兄弟姉妹でも同じように教えたところで同じように覚えてはくれません。つまり個々によってしつけの方法は変えていかなければなりません。しつけに関する本に書いてあることでも、この犬には当てはまらないということはよくありますし、本によって全く違うことを書いてあったりして迷うものです。迷った時には当犬舎までご相談ください。 |
1.ご用意いただくもの 室内飼いの注意点 2.餌の選び方、与え方 与えてはいけないもの 4.ワクチン接種の注意点 動物病院の選び方 5.フィラリア、ノミ・ダニ、 腸管寄生虫の駆虫等 |