4.ワクチン接種の注意点/動物病院の選び方 |
混合ワクチンの接種については獣医師によって考え方が違いますので、かかりつけの動物病院でご相談ください。ただし飼主が何も知らずに獣医師に任せきりというのは良くありませんので、簡単にワクチン接種について説明させていただきます。仔犬は母犬の胎盤を通して、また初乳を飲むことで、感染症の発症を予防できる免疫を母犬から受け継ぎます。これを移行抗体と呼びます。移行抗体をしっかりと受け継ぐためには、母犬が十分な抗体を持っていることが条件の一つとなります。そこで当犬舎では、台牝に定期的に10種混合ワクチン{イヌパルボウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス2型(+1型)、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌコロナウイルス、レプトスピラ(カニコーラ、イクテロヘモラジー、グリッポチフォーサ、ポモナ)}を接種し、抗体を高めることで、生まれてきた仔犬たちにしっかりと移行抗体ができるようにしております。それでも移行抗体は3ヶ月ほどで徐々に低下していきます。仔犬にワクチンを接種するのはそのためですが、移行抗体が残っているとワクチンの抗体を撥ね除けてしまいます。また病気の種類によって移行抗体が低下する時期に差があります。仔犬に何回もワクチンを接種するのはそのような理由によるものです。 当犬舎では生後4〜6週齢頃、母犬からの移行抗体が残っていても効果が期待できるハイタイター(高力価)の2種混合ワクチンを接種させていただきます。仔犬のお引取りが生後3ヶ月以降となる場合は追加で10種混合ワクチンを接種、生後4ヶ月以降となる場合は10種混合ワクチンをもう1回接種させていただきます。母犬の移行抗体が残っている内に、それぞれの株の力を弱めているロータイター(低力価)の10種混合ワクチンを接種しても、移行抗体にブロックされてしまい殆ど効果が得られない(微生物化学研究所による)のですが、仔犬にとって最も危険な感染症であるジステンパーとパルボの2種の株の力を強めたハイタイターの2種混合ワクチンは、4週齢以上の仔犬であればかなりの効果が期待できます(ノバルティス アニマルヘルスによる)。またパルボ以外の移行抗体は3ヶ月未満で低下するのに対し、パルボの移行抗体は低下するまでの期間が4〜4ヶ月半と長いので、4ヶ月未満の仔犬に通常のロータイターワクチンを接種しても効果は期待できません(微生物化学研究所による)。仔犬を引取られたら生後3ヶ月頃および4ヶ月頃に犬を飼養(移動)する地域で罹患する可能性が高い病気を全て含む混合ワクチンの接種を受けることをお勧めします。なお、ワクチンの効果が出始めるのは接種後2〜4週間後となりますので、その間は感染症の可能性がある他の犬には会わせないほうが無難です。 混合ワクチン接種は法律で義務付けられたものではありませんが、狂犬病ワクチンは生後91日以降の犬に対して毎年1回の接種が義務付けられています。狂犬病ワクチンは獣医師が巡回して接種する地域が多いのですが、当犬舎の場合は必ず動物病院に犬を連れて行って接種を受けています。なぜかと言うと、巡回では獣医師も忙しいので1匹毎に丁寧に関わることができず犬や飼主の精神面まで考える余裕がないこと、接種後すぐ次の地区に行ってしまうのでアナフィラキシーになった時の対処が間に合わない可能性が考えられること、接種時期については犬の成長や体調に合わせて選べるはずなのに巡回は年1〜2回しかないこと等、いろいろな問題があるからです。 ワクチンにはハイタイター、ロータイター、生、不活化等、個々の性質の他、対応できる病気によって単一から10種混合まで様々な種類があります(「犬用ワクチンの種類と力価」を参照のこと)。それは犬の成長段階等に合わせたり、地域によって流行る病気が違ったりするので、それらの状況を踏まえて適切なものを選ぶようにするためです。鹿児島では「レプトスピラ」という死亡率の高い病気が流行るので、通常レプトスピラを4種含んだ10種混合ワクチンを接種します(3ヶ月未満の仔犬を除く)。仔犬が病気に感染する確率を下げるためには、免疫が安定する仔犬への最後のワクチン接種後2〜4週間後まで、他の犬に近付けたり野外に連れ出したりしないほうが望ましいのですが、犬の精神面の発達を考えると、多感な幼少期にこそいろいろな環境に馴らすことが重要です。私は多少のリスクがあってもいろいろな環境に馴らしながら、情緒豊かに育てていくことをお勧めします。ただし免疫が安定するまでは湿った地面や土の上の散歩はなるべく避け、他の犬に会わせる時にはその犬がワクチンを接種しているかどうか確認したほうが良いでしょう。また日頃の健康管理には十分配慮し、調子が悪ければすぐに獣医師に相談したほうが良いでしょう。かかりつけの動物病院がお決まりでない場合には「PETPET動物病院検索」、「アニコム損保動物病院検索)」等から検索できます。 動物病院を選ぶ際には、治療に関して幅広い知識があるだけでなく、飼主や犬の精神面に対しても配慮してくれる獣医師がいる所を選ぶべきでしょう。人好きで陽気な犬の場合にはあまり問題はないと思いますが、日本犬のように繊細な犬をあまり扱ったことがない獣医師の中には、そのつもりがなくても犬に精神的なショックを与えてしまうことがあります。よくあるのが「飼主の方はこちらでお待ちください」と言って犬だけ診察室(治療室)に連れて行き、注射などを打つやり方ですが、警戒心の強い犬では「初対面の人にいきなり痛い思いをさせられた」といういやな思いが残る可能性があります。私の知っている日本犬でも病院嫌いの犬は多いです。動物病院に行く前に、診察・治療時等に飼主が傍にいても良いか確認してみると良いでしょう。「注射を打つ前に、犬に好物をあげて緊張を解いてあげます」という獣医師も多いですが、警戒して餌を食べない犬もいます。やはり飼主が傍にいて優しく撫でたり声をかけたりしながら注射を打ってもらうのが一番良いでしょう。ワクチンを打つ日には犬が健康な状態であること、牝犬の場合は発情中や妊娠中でないこと、過去30日以内に他のワクチンを打っていないこと{ワクチンの種類によって(主に仔犬用)は、3〜4週間後に2回目の接種をメーカーが推奨しているものもある}、またその日は激しい運動や水に濡らすことは控えてください。ワクチン接種後、稀にアナフィラキシー(強いアレルギーショック)を起す場合があります。その時は直ちに動物病院に戻り、獣医師に処置をお願いしてください(万一に備えて前以て獣医師に確認しておくことをお勧めします)。通常30分以内に起す場合が多いのですが、4時間以上経過してから起した例もありますので、接種後暫くは犬から目を離さないほうが良いでしょう。「動物医薬品検査所」で検索すれば、それぞれのワクチンについての詳細情報(副作用を含む)が分かります。 以下、飽くまでも私の考えによるものですが、良い動物病院の条件を記しておきます。 (1)治療に関して幅広い知識があり、素人に分りやすく説明できること。 (2)インフォームド・コンセント{飼主に十分な説明をして治療・投薬(特に副作用について説明)の同意・承諾を得ること}を徹底していること。 (3)飼主や犬の精神面に対しての配慮があること。 (4)レントゲンや麻酔をかけての手術など特殊な場合を除き、飼主が診察室(治療室)に入れること。 (5)経験豊かである(「治る確率」などのデータを持っている)こと。 (6)検査、治療、手術など、かかる費用の見積りを前以て提示し、法外な料金を請求しないこと。 (7)休日、時間外、往診中でも連絡がとれ、急患の場合には休日、時間外でも診てくれること。 (8)「他の動物病院に行ったらうちでは診ない」というようなことを言わないこと。 (9)予防薬、餌等を無理強いしないこと。 「(7)」は時間外はともかく、休日までは難しいかも知れませんので、急患の場合には他の動物病院を当たることも必要でしょう。「(8)」は急患で他の動物病院に行くことも考えられるからです。初めが肝心なので良い動物病院を選んでください。 |
1.ご用意いただくもの 室内飼いの注意点 2.餌の選び方、与え方 与えてはいけないもの 3.しつけの基本 5.フィラリア、ノミ・ダニ、 腸管寄生虫の駆虫等 |